『タカコさん』というやさしさを煮詰めたような漫画
『タカコさん』 新久千映著 ZENON COMICSです。
ドラマ化してた『ワカコ酒』と同じ方の作です。
当然絵は同じ感じなんですが、雰囲気は面白いほどに全く違います。
フワッとした感じの主人公タカコさんの日常を描いた作品なんですが、このタカコさん人よりも少しだけ耳が良いって設定でして、話全般を通して雰囲気がとても優しいのですよ。
目まぐるしいストーリー展開が有るわけでもなく、基本的に一話完結のやさしいお話が続きます。
若い頃に読んでもこの面白さはわからなかっただろうなと思いますが。今40歳になってこれほど新刊が待ち遠しくて仕方がない作品は他にはそうないです。
すごく好きな話が有るのですよ。
ネタバレになりますが少しだけ。
カフェで働いているタカコさん、見覚えの有るお客さんが来店します。
このお客さんは角のクリニックに出入りしている薬品メーカーの人だと思い出します。
「すいません、今二組ほどお待ちいただくようになりますが・・・」とタカコさんが伝え、
「わかりました」、「申しわけありません」とやりとりし、座って待つお客さんですが、その際に『チッ』と舌打ちの音が聞こえてタカコはギョッとします。
が、わからないもんだな。おそらく本人も気づいていない無意識の舌打ち。お仕事大変なんだろうな、あそこのお医者さんけっこう威張り屋さんだもの。
どんなときも笑顔で頑張っているうちに外に出せないものがたまって、たまって、知らずとあふれちゃうのかな。
まじめに頑張っている人ほど裏表なく生きるのって難しいんだ、と思いをはせるタカコさんのやさしさが素敵すぎです。
『舌打ち』という不快な行為の表面的な理由ではなく、一歩先の原因に思いをはせる余裕ってなかなか私は持てませんね。40にもなって悟りの浅い限りと感じ、反省するばかりです。
人の事を思いやる余裕なんてなかなかない、余裕のないご時世ですがだからこそ余計に効率的でも目標指向的でもないやさしい物語りが心の余裕として必要なように思います。(少なくとも私は定期的に『タカコさん』読んで癒されつつ、もっと余裕を持って人にやさしく接することが出来るようにならねばと自省してます。)